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Change The Cycle Report
新しいサイクルをつくる、みんなのレポート

レポートMV

REPORT

2024.11.28

関わる人すべてが幸せになる循環づくりを目指す、ニューバランスジャパンの眼差し

世界的なシューズ、アパレルブランドとして多くのファンを持つ、ニューバランス。同社では、グローバルと日本国内それぞれで、環境に配慮したものづくりを推し進め、その取り組みがさらなるファンの獲得、ブランドの魅力を高めることにつながっています。ニューバランスがサステナビリティへ向けて実践していること、その可能性について、ニューバランスジャパン営業本部リテール部部長の中塚博さん、同 マーケティング部PR & DIGITALマネージャーの小澤真琴さんに話を聞きました。

本国のグローバルでの取り組みを踏まえながら、ローカルの文化に合わせたサステナビリティとは何かを考えていく必要があると語る小澤さん

エシカルな取り組みがファンとの関係を深め、ブランドの価値を高める

――ニューバランスにおいて、環境に配慮したものづくりが加速している背景について教えて下さい。

小澤:
当社では、これまでも再生素材を用いたシューズを特別なコンセプトモデルとして発売することはありましたが、今、改めて一番売れている「574」シリーズを始め多くの商品で再生素材を用いるなど、より大きなインパクト与えられるような取り組みを進めています。また、使用する素材だけでなく、従来の開発・製造工程の見直しも図っていて、例えば、1枚の革からどのような型の採り方をすれば、無駄なく効率的に、原材料を使えるかといった細かなところにも力を入れています。

特別なモデルだけでなく、定番商品でも再生素材を使うといった環境に配慮した製造のアップデートが繰り返されている

中塚:
これらの取り組みは、2019年から本格化し、CO2排出量の削減、廃棄物の削減、環境に配慮した素材の調達など、グローバルで2030年までの目標数値を掲げています。その中でも大きな動きの一つが、物流や工場を始めとする当社の事業で使用するエネルギーを、2025年までに100%再生可能なものにするというものです。実際、グローバルですでに90%が再生可能エネルギーでまかなわれています。
また、CO2排出量については、自社で排出するものだけでなく、物流を始め間接的に排出されているものも削減することを段階的に目指しています。最終的にはサプライチェーンのすべてにおいて、包装やゴミなども含めたCO2排出量削減を実現していきます。

――日本国内ではそれらの取り組みの他に、独自のアクションはあるのでしょうか。

小澤:
今年から直営店舗で始まった取り組みに、リユースプロジェクトがあります。この取り組みは、店頭でディスプレイされていたもの、店舗スタッフがユニフォームとして着用したシューズやアパレルなど、通常は廃棄していた製品をクリーニングして、リユースアイテムとして販売するものです。ポップアップイベントなどを通して、これらのリユース製品に触れたお客様の反応はポジティブなものばかりで、クリーニングによって新品同様になっていることや、価格がリーズナブルなことも好評で、店舗運営の一つの課題でもあったところに光を当てることができたように感じます。この企画は、現場の社員のアイデアからスタートしたもので、社員から回収した製品をリユースするなど、より大きな動きとなることを構想しています。

エシカルな取り組みが顧客との関係性を深めていく可能性について語る中塚さん

中塚:
これらの取り組みが好意的に受け入れられる一方で、そのことが直接的に商品を購入する動機に結びついてはいない印象もあります。当社としては、企業としてのサステナビリティへ向けた取り組みの一環であるため、もちろん大きな意味はありますが、商品の付加価値としていかに発信していくかも、ブランドの未来を考える上で重要です。
そこで、ニューバランスのエシカルな商品をどのようなお客様が購入されているか調査をしてみると、すでにブランドに対してとてもロイヤリティの高い、VIPのお客様が多いことが分かりました。つまり環境に配慮した商品が売れるというよりも、その取り組みに力を入れている私たちのブランドに対して共感してもらうことが、お客様との関係性を強くし、結果的に、コンバージョンにつながっていくということが明らかになったように思います。
特にアパレル業界において、実店舗の役割が変化する中で、ただモノを売るだけではなく、ブランドを発信して、お客様との関係をつくる場所にしていくことの価値を示しているように感じます。

社内からサステナビリティへ寄与する取り組みのアイデアが生まれるような環境が少しずつ育まれていると語る

一つひとつの商品に愛着を持ってもらうための機会を増やす場づくり

――ブランドとファンをエシカルな視点でつないでいくという意味で、KCSはその一つの舞台になる場所だと思います。KCSへの印象や、参画されることを決めた理由はどのようなことがあったでしょうか。

中塚:
KCSがまだ構想段階の時に、「こんなプロジェクトを考えている」という相談を受けたのを覚えています。三井不動産のような大きな商業を手掛けている企業が、ファッションにおけるサステナビリティにどのように取り組むのか、とても注目していましたが、その期待をはるかに上回る魅力的な場所が生まれていることに感動しました。本来、廃棄されていたかもしれない商品が、もう一度、命を吹き込まれ、独自の世界観を持った空間で輝いている様子はすばらしく、またブランドの垣根を超えてコラボレーションするようなディスプレイ、そして地域や来場者へ向けたエシカルな情報発信、イベントが行われている場は、まさにSDGsを体現したものだと思いました。
ここで行われている、廃棄される可能性のあった商品に光を当てる手法や、ファッションの新しい循環を、子どもたちや地域の人々へと波及させていく取り組みは、商品を提供し参画しているブランドにとっても多くの学びがあります。そして、各ブランド、企業におけるサステナビリティな取り組みと結びつけていけば、さらなるイノベーションが生まれる予感がします。例えば、私たちが取り組んでいるリユース商品の販売を、KCSでもできるかもしれませんし、ニューバランス発信のワークショップをしたり、そんな様々な可能性にワクワクしますね。

インソールを使ったオブジェ

――改めて、ファッションに携わるブランドが、サステナビリティを踏まえた製品づくり、そして、それを他の企業と協働して実現していくことへ、どのような思いを持たれているでしょうか。

中塚:
私たちのようなシューズやアパレルをつくり、世界的に展開をしているブランドは、大きな社会的責任を負っています。そこに本気で取り組もうとすれば、根本的なものづくりの手法、製造工程、物流など、見直して改善していける点はたくさんあるはずです。そして、それが付加価値として感じてもらえるような、お客様との関係性をつくっていくために、自社だけでなくKCSのような新しいタッチポイントとなる場所を増やしていくメリットは大きいと思います。

小澤:
製品をつくる側の視点で再生可能エネルギーへの転換や、廃棄物、CO2排出量の削減には取り組むのと同時に、ウェアロンガー ウェイストレス(Wear Longer Waist Less長く着て、無駄をなくす)というニューバランスのグローバルの理念に則った取り組みは、まさにお客様と共につくり上げていくものだと思います。今あるものを長く使えば、その分だけ環境への負荷は減らすことができます。
当社の人気のサービスにシューズクリーニングがあります。シューズを長く、大事に履くためにケアをして、革を“育てる”ように使っていくことで、ニューバランスの靴への愛着が生まれ、いつのまにかサステナビリティへの寄与していることにつながる。そんな、関わる人すべてが幸せになるような循環を生み出していきたいですね。

お話聞いたのはこの方

株式会社ニューバランスジャパン 営業本部 リテール部 部長 中塚博さん

1993大手婦人服専門店チェーン入社後、VFジャパン株式会社DTCシニアマネジャーを経て、2015年10月から現職。

株式会社ニューバランスジャパン マーケティング部PR&DIGITALマネージャー 小澤真琴さん

大学卒業後ニューバランスジャパンに入社し、以来マーケティング、PRに従事。現在はPRマネージャーとしてニューバランスにかかわる全般を担当。