PAGE TOP ページのトップに戻る

Change The Cycle Report
新しいサイクルをつくる、みんなのレポート

レポートMV

REPORT

2024.04.19

世代を越えて愛されるシュニール織。
情緒をまとわせるフェイラーのものづくり。

個性的で魅力的なシュニール織を用いたハンカチやタオルを始めとする商品を取り扱うフェイラー。同社の長い歴史に培われてきた技術と、世代を越えて愛されるものづくりへの姿勢には、KCSが目指す“新しいサイクル”を、より価値のあるものにするためのヒントがありました。

同社の代表取締役社長である八木直久さんに、フェイラーの製品の魅力が生まれる背景と、そこから始まる様々な取り組みについて話を聞きました。

感覚を呼び起こすものづくり

――ドイツ生まれのフェイラーが、日本で愛されるブランドとなった歴史について教えて下さい。

八木直久さん(以下、八木)
フェイラーは1948年に、ドイツ東部(当時はチェコ)のホーエンベルクという小さな町で創業し、今に至るまで同地でシュニール織を用いた商品をつくり続けています。シュニール織は、モール糸を横糸として織り上げられた柔らかく厚みのある質感が特長で、主にタオルに用いられる他、日本では、ハンカチ、バッグ、ポーチといった商品も人気です。

ホーエンベルクの人口約1,400人のうち、約200人ほどがフェイラーの職人として働いていて、町を支える大切な産業の一つでもあります。また、日本で取り扱っているバッグやポーチは、ホーエンベルクでつくられたシュニール織の原反を使い、日本の職人が製作を手掛けていて、日独それぞれの職人の熟練の技によって生み出されています。

フェイラーのシュニール織が日本に初めて入ってきたのは1970年代で、日本のフェイラーを創業した山川和子氏が、ベルギーを旅行中にシュニール織に出会い、その魅力を日本に伝えたいという思いからスタートしています。

フェイラージャパン代表の八木直久さん

――日本で半世紀に渡って親しまれるフェイラーの商品にはどのような思いが込められているのでしょうか。

八木
特にハンカチやタオルは吸水性や丈夫さといった、機能性は絶対に必要なものですが、同時に、私たちは“情緒的価値”を大切にしたものづくりを掲げています。例えば、子育てで大変な方が、眠るお子様にシュニール織を掛けた時、今日も頑張ろうと気持ちを前向きにできたり、仕事で重要なプレゼンがある際、勝負ネクタイのような感覚で、勝負ハンカチを持っておくことで気持ちを後押しされるといった、目には見えない“心”に寄り添うような商品を届けたいと思っています。

その感覚を呼び起こす要素として、シュニール織の柔らかな手触り、さらに多彩なデザインがあります。シュニール織は、モール状の横糸をつくる時に、デザインごとにどの場所にどの色が配されるかが綿密に決まっていて、何十もの工程を重ねる特殊な織り方や糸の結び目の始末など、温かみのある質感からは想像できないほど、高度な技術が用いられています。このプロダクトとしての高い品質があるからこそ、その先にある使う人のシーンに向けた提案ができると考えています。

フェイラーのシュニール織は吸水・乾燥性に優れ、使うほどに肌になじむ柔らかで厚みのある質感が特徴

50年前に使っていたおくるみが今も残っています

――世界や日本の社会における価値観が時代と共に大きく変わり、細分化する中で、そのものづくりの視点は、どのように変化や進化しているでしょうか。

八木
もちろん、SDGsの視点を踏まえたものづくりや様々な取り組みには注力すべきだと考えています。商品については、繊維の安全性を証明するエコテックス認証を始め、主な原料となる綿のトレーサビリティの確保に力を入れています。その他、PASS THE BATON MARKETに出店した際にも販売した、シュニール織生地の端材を再利用した2種類のデザインを組み合わせたポーチの販売もその取り組みのひとつです。

一方で、フェイラーの商品は、丈夫で、長く使われること自体がサスティナブルな存在とも言えます。お客様の中には、親子3世代に渡って当社製品を愛用いただいている方もいて、50年前に使っていたおくるみが今も残っているそうです。親から子へとフェイラーの魅力が伝わり、世代を越えたファンが生まれることは、ブランドの価値を高めると同時に、それを支える商品があってこそ成り立つものです。

また、多くの世代にファンをつくるという視点では、渋谷区立神南小学校とのコラボレーションもその一つです。この企画は、小学校5年生が、“渋谷みやげ”をつくるというコンセプトの授業で、子どもたちが商品にハンカチを選び、協力してくれるブランドとして学校側から声を掛けていただいたことでスタートしました。

子どもたちが考案したデザインの製作を引き受けるだけでなく、当社の社員が講師として、製品がつくられる工程や、マーケティングなどの知識を教える場を設けてもらい、全5回の特別授業を行いました。ここで生まれたハンカチは、2024年秋に販売予定で、子どもたちにはフェイラーの店頭でも販売をする体験もしてもらう予定です。

これら、親と子の口コミや、子どもの時の出会いなど、人の原体験に寄り添うような取り組みは、フェイラーの在り方を示すものと言えます。

――KCSに参画されることになった経緯や、期待されていることを教えてください。

八木
三井アウトレットパークではこれまでも複数の店舗を出店してきたこと、そして、スマイルズさんとはPASS THE BATON MARKET出店を通しての関係性もあり、KCSが目指すビジョンにも大いに共感できました。ここまでお話しした通り、私たちの商品は、背景にあるストーリーや思いに共感してもらうことも大切で、その魅力を届ける場としてKCSはぴったりだと感じました。

ブランドごとではなく、アイテム一つずつに焦点を当てて、その価値を掘り起こし、再発見してもらう宝探しのような体験は、新しいファンとの出会いにもつながります。同時に、自分たちが扱っている商品が、どれも大切な“宝”だということを改めて感じる機会にもなるのではないでしょうか。

当社では、KCSに限らず様々な企業やブランドとコラボレーションしてきました。たとえば、昨年秋には、代官山 蔦屋書店で、ブックコンシェルジュがフェイラーのデザインからインスパイアされた「泣ける本」をセレクトし、ハンカチと同じデザインのペーパーブックカバーに包まれた本をセットで販売するというイベントを実施しました。中身は買ってみてからのお楽しみ。「ハンカチのデザインから、本を選ぶ」という新しい読書体験を提案しました。こちらのイベントは大変好評で、母の日に向けて、5月8日(水)~5月19日(日)まで代官山 蔦屋書店にて第2弾を開催いたします。

蔦屋書店とコラボレーションしたフェイラーのハンカチと同じデザインのブックカバーと本

このようなコラボレーションの背景には、フェイラーを知らない方にも、ブランドや商品の魅力が伝わってほしいという思いと共に、1枚のハンカチがメディアとなって、新しいつながりが生まれていってくれたらという思いがあります。
KCSという空間、私たちや他のブランドの商品が起点となって、色々な発見や体験があり、ファッションに対して新しい気持ちや行動が生まれていく場所になってほしいですね。

お話聞いたのはこの方

八木直久さん
フェイラージャパン株式会社 代表取締役社長

1992年住友商事株式会社入社後、住商オットー株式会社、ジュピターショップチャンネル株式会社執行役員 営業統轄本部長等を経て、2022年10月から現職。