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Change The Cycle Report
新しいサイクルをつくる、みんなのレポート

レポートMV

REPORT

2024.04.26

“余分なもの”を減らして生まれたÖffen(オッフェン)の靴

2021年に立ち上げられたシューズブランド「Öffen(オッフェン)」。“環境を意識した靴作り”をテーマに、従来とは異なる製造方法で生み出される商品は、独創的で魅力的なデザインで多くのファンを獲得しています。ユーザーが商品の魅力を見つけて手に取ることが、結果として社会貢献につながるというアプローチは、KISARAZU CONCEPT STORE(KCS)が目指す“洋服に袖を通すと新しいサイクルが始まる”という考えにも通じます。今回は、同ブランドの目指す靴作りと、KCSへ参画することになった経緯について、プロモーション担当の赤羽由希さん、PR担当のヨシムラミユキさんに聞きました。

気軽に履けるおしゃれな靴と環境配慮を両立

――オッフェンは、どのようにして生まれたブランドでしょうか。

赤羽由希さん(以下、赤羽 ※敬称略)
オッフェンは、20年以上に渡って靴作りをしてきた代表の岩本英秀(株式会社Normsの代表取締役)と、アパレルのクリエイティブディレクターとしてものづくりに携わってきた日坂さとみが立ち上げたブランドです。

日坂がアパレル業界に関わる中で、ファッションの商流の早過ぎるスピードや、毎シーズン押し寄せては引いてを繰り返すトレンド、そして製造過程で様々な環境に負荷を与えている現状を見つめ直し、もう一度、スローな視点でものづくりができないかと考え始めたことが、この靴が生まれたきっかけです。

オッフェンのプロモーションを担当する、
株式会社Norms 赤羽由希さん

オッフェンの靴のデザインは、すべて日坂が手掛け、靴としての構造を始めプロダクトとしての設計は岩本が担い、「何を作るか」ではなく、「余分なものを減らしてどう作るか」をコンセプトにしています。その靴の特徴は、「気軽に履けるおしゃれな靴」であることと「環境に配慮した素材」を用いていることです。

オッフェンは、季節を問わず、様々なシーンで長く履いてもらえる靴を目指していて、見た時にエレガントな雰囲気だけど、スニーカーのように履けるデザインになっています。また、環境への配慮については、靴の素材と、製造・流通の視点それぞれに注力しています。

例えば、シューズのアッパー部分には、使用済みのペットボトルから作られたリサイクル糸を使用しています。この他、型崩れを防ぐためのシューキーパーには、トウモロコシなど植物由来の土に還るプラスチックを使うなど、リサイクルと共にゴミを減らすことにつながる素材も取り入れています。

オッフェンの靴は、アッパーにPETのリサイクル糸によるニット生地を用い、
従来の靴のパーツを削ぎ落としたようなシンプルな構造で、とても軽量なのも特徴

製造工程においては、従来の靴作りから、裏地を始めとする様々なパーツを省いて、履きやすさは維持しながらも、使う素材を減らすためのチャレンジをしているのも特徴です。特にアッパー部分は、複数のパーツを組み合わせるのではなく、1枚に編まれた生地を折るように成形していくため、余分な端材が生まれません。

この靴作りは、どの工場でもできるものではなく、専門の工程や技術を持ったチームでしかできません。一つの製品のために、既存の製造工程を変えるというのは、労力のいることで、私たちも製造の体制を整えるのに約2年かかりました。多くのブランドやメーカーにとって難しいことだと思いますが、そこをもう一度見直すことも、環境を考えた靴作りにつながるポイントだと思います。

シューキーパーに生分解性プラスチックを用いるなど靴以外でもゴミを減らす工夫をしている他、
商品用の袋を店舗でトートバッグに作り変える企画なども実施

ヨシムラミユキさん
オッフェンの靴は、売り方にも理念が表れています。まず、「1足も処分しない」ということを大切にしているので、現在は卸しはせずに、最後まで責任をもって自分たちの手で見届けるようにしています。また、在庫が残っている靴もセールなどを通して、誰かの手に届くように取り組んでいますが、セールの場合もチャリティーセールとして実施し、売り上げの一部をさまざまな団体に寄付しています。

また、外部とのつながりという点では、他のアパレルブランドで不要になったニット素材や、B品のバッグの素材を利用してリボンを作って、【Reborn project】として、オッフェンの靴に縫い合わせた特別な1足として販売しています。とても好評で、2024年も、複数のブランドとのコラボレーションが決まっています。

PRを担当するヨシムラミユキさん

ファッション業界の“当たり前”にとらわれない

――オッフェンでは、店作りにおいても、余分なものを出さない試みをされていますよね。

赤羽
はい。今、オッフェンは、直営の実店舗が3店舗あります。店舗には、陳列する棚や家具の他、内装の仕上げなど様々な素材を使われますが、そこでも可能な限り、ゴミを減らし余分なものを使わないようにしたいと考えています。

2月にオープンした代官山店の店内ディスプレイ。この他に、兵庫の神戸と三宮に実店舗を構えている

2024年2月にオープンした「Öffen the House 代官山店」もその思いが表れた店舗です。入居以前は、同じくアパレルブランドが入っていて、そこで使われていた家具や什器、仕上げの建材の一部を、今の店舗でも再利用しています。例えば、壁付けの棚やミラーは、位置を変えて設置したり、店舗の解体時に出たタイルや板材を、商品をディスプレイする際の台座として利用したりしています。

また、スタッフの働き方についても新しい取り組みを始めました。通常の店舗スタッフの他に、関西と関東のそれぞれの店舗で働く人材として、「サポーターズ」という名称で募集し、「1カ月で3日以上出勤できる」という条件で、現在20名ほどが働いています。

アパレルの業界は人材の流動が激しく、入れ替わりの度に教育をしていくことは大変です。ブランドに愛着を持って、それを支えてくれるような立場で働ける人材がたくさんいれば、雇う側は心強いですし、働く側も、自由な働き方で関わることができのではないかと考えています。

代官山店では、以前にあったアパレル店の什器や仕上げの一部を再利用した空間が展開

――今回、KCSに参画することになった経緯と、期待していることを教えてください。

赤羽
KCSは、オッフェンが目指している、余分なものを減らしていくものづくり、そして、1足も処分しないという考えにも通じるコンセプトがあり、それが分かりやすくシンプルに表現された場所だと感じます。

加えて、KCSの空間やビジュアルといったデザインも魅力的で、コンセプトだけでなく、商品の見た目の良さにも徹底的にこだわっているオッフェンの理想にも重ね合わせることができ、参加することになりました。

1年で8つのコレクションが登場するが、すべて刷新するのではなく、最新のコレクションに以前の商品を並べたプロモーションを実施するなど、シーズンやトレンドによって変わらない、1足ごとの魅力に焦点を当てた販売を意識している

私たちだけでなく、アパレルに関わる多くの人が、セール品やアーカイブ品にも思い入れを持っていて、その商品を大事にしたいという思いを、KCSは受け入れてくれる場所でもあると思います。

KCSに商品が並ぶことで、これまでオッフェンを知らなかった人、気になっていたけど触れたことがなかった人にも、この靴の魅力を見つけてもらえる機会が増えるのは嬉しいです。そして、アパレル業界において当たり前だと思われていたことを、オッフェンの靴作りやKCSの仕組みのように、新しいカタチへと変えることで、様々な人が幸せになって、それが気づけば社会を良くすることにもつながっていく、そんな循環が生まれていくといいですね。