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Change The Cycle Report
新しいサイクルをつくる、みんなのレポート

レポートMV

REPORT

2024.06.28

自分の身の回りのモノの
サイクルを見つめ直す場所
みんなで目指す「100%マーケット」

2024年3月に初開催してから毎月行っている「100%マーケット」。服にまつわるさまざまなワークショップや、地域の特産品が集結するマルシェなど、地球の未来へ目を向けるきっかけをつくる取り組みについて、そこに集う人々の姿と共にレポートします。
(取材日:2024年3月16日(土)、17日(日)

回収した洋服は2日間で約1.2トン

「1着の服も無駄にされることがないように」という想いのもと、ファッションを中心に、さまざまなブランドが参画し、デッドストック品や規格外品など、誰にも出会えず倉庫に眠ってしまったアイテムに、もう一度光を当てる場、KISARAZU CONCEPT STORE(以下、KCS)。

そのKCSのテーマを体現するイベントの一つである「100%マーケット」は、洋服を作る工程で出てしまう端材、企業の倉庫に眠るデッドストック、サイズが合わなくなった子供服、クローゼットに眠るアイテムに新たな価値を見出し、生活者とともに新たなサイクルを生み出すためのマーケットです。

3月に開催されたこのイベントでは「服の交換会」と「服の回収BOX」、そして、大人も子どもも楽しめるワークショップの実施、さらに食を中心としたマルシェが登場しました。

「服の交換会」は、兵庫を拠点に婦人服の小売事業を手掛ける株式会社ワンピースが取り組んでいる、着なくなった服を捨てるのではなく、誰かの服と交換するための場です。

中庭で開催された「服の交換会」の様子。
交換するために集められた洋服

会場に1着持ってくると、その場に並ぶ服の中から1着を持っていくというルールで、使わなくなったけれど大切にしたいという思いを受け止めながら、誰もが気負わず、楽しみながら服という資源の循環に関われる仕組みになっています。

同社のディレクターである石田晴也さんは「服の交換会」の目的について次のように語ります。

「洋服を扱う企業として、アパレル産業の大量廃棄の問題にしっかり向き合いたいという思いからスタートしました。私たち企業が製造や流通の過程を見直していくことはもちろんですが、1人のユーザーさんが1着の服を長く大切に使うだけでも、着実に環境問題の一歩になります。

今回、100%マーケットに参加し、初めての千葉での実施となりましたが、他の土地と同じく楽しんで服を交換しているお客様の姿を見ると、さまざまな人や企業が一緒になって取り組むことで、1つの企業だけでは難しい課題解決への大きな力が生まれると実感しました」

2日間で交換された洋服は658着。クローゼットに眠る洋服が、別の誰かにとっての大事な1着になるという、新しいサイクルが生まれました。

続いて、「服の回収BOX」は、家で眠っている服を持ってくると、クーポンと交換できるというもの。枚数や重さに関わらず、1着からでもKCSで使えるクーポンをもらうことができ、服を捨てる時に感じてしまう罪悪感を和らげ、ポジティブな気持ちで服や資源の循環に寄与することができます。

中庭前の通路に設置された回収ボックスには、
押入れで眠っていたたくさんの洋服が届けられた

イベント開始早々、多くの人が回収BOXの前に並ぶ姿が見られ、3月開催の2日間で1,250kgもの服が集まりました。回収された服は、ストアパートナーであるクレサヴァ株式会社が持つ高度な技術によって625kgの肥料へと生まれ変わります。これは、東京ドーム約6個分にあたる農地面積をまかなう量とのこと。

こういった資源循環の技術があることに驚かれるお客様もたくさんいらっしゃいました。単に服を処分するのではなく、手放す洋服が新たな資源になると思うと、前向きな断捨離のきっかけになるのではないかと考えています。

食を通じて知らなかった地元の魅力に出会うマルシェ

「服の交換会」が行われた中庭では、KCSのコンセプトや「100%マーケット」の想いに共感してくださる地元の出展者によるマルシュも開催しました。木更津で育った野菜や海産物、木更津市の学校給食で提供されている有機栽培のコシヒカリ、千葉の落花生を使ったピーナッツバター、海外から輸入したこだわりのコーヒーやワインなど、それぞれ売り手の思いとストーリーを持った多彩なジャンルの商品が並びます。

千葉の有機農業に取り組む生産者や食品加工メーカー、流通事業者が協働するブランド「ちばびお」のブースでは、地元食材を使ったオーガニックなリゾットやスープを販売。
ちばびおの三好智子さんは、「有機農家による食材と、無添加食品加工の高い技術を持つ石井食品株式会社、良品計画の千葉事業部が協力して生まれた商品です。オーガニックな食について考えると共に、地元の人たちが千葉の魅力を知る機会にもなってほしい」と話します。

出展者自身がKCSでのお買い物を楽しまれたり、出展者同士のつながりができたことを価値に感じてくださる方もいらっしゃり、「100%マーケット」という場を起点に新たな共感の輪が広がり始める兆しを感じました。

手放すはずの1着が、
大切な1着に生まれ変わる

ワークショップのエリアでは、6つの企画が用意され、親子連れを中心に、多くの方に参加いただきました。

ワークショップの一つである、シルクスクリーンを使って自分だけの1着を作るアート体験では、着なくなったTシャツなどにオリジナルアートプリントを施す方法をレクチャー。自分で描いた図柄を版にし、選んだインクと道具でプリントする作業に夢中になりながら、出来上がったTシャツを手に喜ぶ子どもたちで賑わいました。

同イベントのパートナーの一つであるバンタンデザイン研究所の担当者は、「子どもたちにとって、シルクスクリーンのプリントをする機会は珍しく、その作業工程も楽しんでくれています。
また、服の回収BOXに入れようと思って持ってきていたTシャツにプリントしたところ、その柄が気に入って、そのまま持ち帰ったお子さんもいました。リメイクなどのデザインを通して、ファッションの新しい楽しみ方に触れる場所になっていると感じました」と話します。

一方、古着を使って鍋敷きや座布団を作るワークショップでは、親子がそろって作業に没頭する姿が見られました。このワークショップでは、不要になった衣類を巻き取るように細く丸め、毛糸で縛っていくことで、カラフルな円盤形のオブジェが出来上がります。この円盤はサイズによって鍋敷きや座布団として使え、使用した布や毛糸、巻き取り方によって唯一無二の作品が生まれます。

レクチャーした担当者は、「子どもよりも夢中になっているお母さんやお父さんもいて、楽しみながらでも、環境やSDGsのことに関われる機会の一つとして新鮮に受け止めている方もいました」と話し、100%マーケットのテーマである「みんなで目指す」場所が広がっているようでした。

また、この他にも、子どもたちが集うキッズコーナーには、施設の内装設計を手掛けた船場による、建材の端材をパズルのピースのように使って遊べる場が設けられていました。

“みんなで目指す”「100%マーケット」は、KCSに並ぶファッションアイテムを提供していただいているブランドパートナー、不要になった服を別の資源へと生まれ変わらせる技術をもつストアパートナー、そしてお買い物やワークショップを通じて、この新たな服のサイクルに参画してくださるお客様がいてこそ実現します。
ワークショップやマルシェの内容は各回ごとに変化させながら今後も月に1回のペースで開催予定の「100%マーケット」。楽しみながら、気軽に、自然に身の回りのモノを100%大切に使うことに気づいていける場へ、ぜひ足を運んでみてください。

KCS内のカフェ「THE OPEN CAFE」で提供している
人気スイーツ、イベントで疲れた時にはご利用ください