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Change The Cycle Report
新しいサイクルをつくる、みんなのレポート

レポートMV

REPORT

2026.06.26

【3周年記念】ファッション製品のエンド・オブ・ライフをどう設計する?~巡る服の可能性を現場で考えるツアーレポート①~

「無駄にされる服が1着もない世界をつくりたい」
そんな想いから、KISARAZU CONCEPT STORE(以下、KCS)は始まりました。
2026年6月4日(木)、開業3周年を記念し「巡る服の可能性を現場で考えるツアー」と題したイベントを開催。海外ブランドや国内ブランドのサステナビリティ担当者から繊維商社、設計・施工会社、大学、メディアの方まで、服やものの資源循環に関心を寄せる約70名の方が参加されました。

「ファッション製品のエンド・オブ・ライフをどう設計する?」をテーマにしたトークセッションでは、ファッション業界における循環型社会の実現に向けた取り組みや課題についてパネルディスカッションを実施しました。

さらに、KCS館内ツアーやファクトリーラボの横に併設する「サーキュラーファーム」での綿花の種植え体験、そして参加者同士の交流会など、熱気あふれるイベントとなりました。

KCSの発起人でもある三井不動産株式会社の佐野川靖のご挨拶からスタート。

この記事では、本イベントのパネルディスカッションの内容と館内ツアーなどの様子をご紹介します。

立場の違う4者によるパネルディスカッション「ファッション製品のエンド・オブ・ライフをどう設計する?」

パネルディスカッションでは、WWD JAPANのサステナビリティ・ディレクター向千鶴さんによるファシリテーションで、それぞれ違った立場でファッション業界の資源循環に取り組む4者にご登壇いただきました。

登壇者
・株式会社ユナイテッドアローズ 経営戦略本部 サステナビリティ推進部 部長 玉井菜緒さん
・Free Standard株式会社 代表取締役 張本貴雄さん
・サーキュラーカーボン株式会社 代表取締役 松本大輔さん
・三井不動産株式会社 商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部 伊藤榮輝
・ファシリテーター:WWD JAPAN サステナビリティ・ディレクター 向千鶴さん

パネルディスカッションでは、大きく3つの問いについてトークが繰り広げられました。

1つ目の問いは「あなたにとって、服のEnd of Lifeはどこからはじまりますか?」

自主企画生産品の売り上げが全体の6割ほどというユナイテッドアローズの玉井さんはこう話します。

玉井さん:
「商品を企画する時点からエンド・オブ・ライフを意識しています。デザイン、機能、素材の組成や耐久性、修理のしやすさなど、それらは服の寿命に関わります。一方で服の終わりというのは、われわれ作り手だけでは完結しない話でもあります。お客様が"もう着ない"と思った瞬間に服の終わりが現実化するという側面もあります。なのでわれわれとしては作る立場としての意識もありますし、小売りの立場としてはお客様が"もう着ないな"と思ったときに、捨てるだけではない別の選択肢をお示しするということも意識しています」

続いてFree Standardの張本さん。Free Standardは、ブランドが自社で「公式リユース(中古品販売)」や「お試しレンタル」を簡単に始められる仕組みを提供する、リコマースビジネスを行っている会社です。

張本さん:
「ブランドさんが商品を作られて、店頭に並んだタイミングからお洋服のエンド・オブ・ライフがはじまっていると思っています。販売をされているタイミングでしっかりとブランド様自身が回収できるような仕組みを私たちからご提供できるような企業になっていきたいと思っています」

3人目の登壇者、サーキュラーカーボンの松本さん。サーキュラーカーボンは独自の技術で衣類を炭化させ、土壌改良材へと生まれ変わらせています。KCSのファクトリーラボの外に併設するサーキュラーファーム(畑)もサーキュラーカーボンさんに整備していただき、服から作った土壌改良材「SoilTas」を散布し、季節ごとにさまざまな草花や野菜を育てています。

松本さん:
「僕にとって服のエンド・オブ・ライフは、服の廃棄を意識して、設計段階の原材料選定から始まっています。もともと僕はリサイクル業界で15年ほど働いておりますが、今のテクノロジーで再資源化できる要素というのは"原材料"と"物の状態"に左右されます。廃棄の段階で再資源化しやすいものを原材料として選定していただくと圧倒的にリサイクル・再資源化の難易度が下がります」

続いて4人目はKCSを展開する三井不動産の伊藤。

伊藤:
「KCSはブランドさんの倉庫に眠っていた規格外品やデッドストック品を買い取らせていただきをお客様へお届けしていくお店です。KCSで扱う商品たちはそもそもエンド・オブ・ライフなものたちともいえるのですが、われわれはできる限りそれらをお客様に届けてエンド・オブ・ライフではないよ!ということを体現していきたいと思っています。また、KCSでは店舗空間づくりにおいても同様に、ブランドさんの倉庫に眠っていた什器やラックなどをお譲りいただいて店内で活躍してもらっています」

それぞれの立場によって服のエンド・オブ・ライフの捉え方、向き合い方はさまざま。ご来場された皆様もご自身が携わるお仕事の領域の中で、それぞれにとっての「製品のエンド・オブ・ライフ」を考えるきっかけになったのではないでしょうか。

続いて2つ目の問いは「実際に取り組みをする中で、一番手強い壁は何ですか?」というもの。

この問いに対しては、共通の課題として"コスト"という観点で議論が展開しました。製品を終わらせずに循環させようとしたときにかかる手間とコストは誰が負担するのか。

松本さん:
「僕が目指しているのは、再資源化したもので付加価値のある製品が売れればそこでキャッシュポイントができるので、最終的に処理コストはさげられるというような循環サイクルができればと思っています」

つまりアパレルメーカーは自分たちが作る洋服のエンド・オブ・ライフの先に、土壌改良材を生み出す原料メーカーになるという発想です。

張本さん:
「私たちにとって一番手強い壁はブランド様が本気でリセール事業に参入するという意思決定をしていただくことだと感じています。背景にはブランドの皆様は毎年新しいコレクションを作られて新たにエンドユーザーに驚きや感動を与えるプロダクトをご提供されています。これらの在庫を100%消化するというのはどうしても難しいという事実があり、一部残ってしまう。残っている在庫があるにも関わらずまた中古品をブランドとして自ら回収して再販に回すという行為自体が本来あるべき姿なのかという、経営課題に直結するような問いが、非常に高い壁だと感じています」

伊藤:
「KCSがやっているのはデッドストック品や規格外品に付加価値を感じていただけるような形でお客様にお届けすることです。のべ160社以上のブランドさんに参画いただいていて、さまざまな価格帯やテイストのブランドさんがいらっしゃるので、できる限り一点ものに見えるようなVMDの工夫などもしつつ、一方でお客様に伝わりやすいようにお届けする(サイズ展開のわかりやすさなど)という、一見矛盾するようなことをやらなければいけない。この店が体現していくのは、社会課題を解決するためにデッドストックをなくしていくことなので、これらをどう両立させるかが手強い壁ですね。このお店のテーマとしてサステナビリティというのは根底にはあるんですが、お客様へお届けする体験価値という点においては"楽しさ"というのはすごく大事にしています」

それぞれのお話を聞きながらメモを取られていたユナイテッドアローズの玉井さん。

玉井さん:
「伊藤さんがおっしゃるように、サステナビリティの思いが根底にありながら、それをお客様にどうお伝えしたら共感していただけるか、その伝え方というのは日々試行錯誤していますね」

本音ベースのディスカッションの内容にうなずきながら聞いている方、熱心にメモを取る方も。

さらにFree Standardの張本さんはこう続けます。

張本さん:
「サステナブル=コスト・時間がかかってしまうという先立つ課題に対して、どう経済合理性をとれるような活動にしていけるかというのが重要で、一つの商品を一回販売して終わりにしない、ということを商品を設計する段階からつくれるといいのではと思っています。ブランドの立場も私たち二次流通の立場も実際に商品は余ってしまいます。そこでサーキュラーカーボンさんのような企業とタッグを組みながら新たな循環を作っていくというのは大事だなと思います。1社でやるのは本当に難しい。ユナイテッドアローズさんのようなブランドのみなさん、僕らのようなサプライチェーンパートナー、そして再資源化するサーキュラーカーボンさん、三井不動産さんのようなこういった場を作ってくれる企業、こういったさまざまな企業が少しずつ頑張ることで、未来の循環を生み出すのではないかと思います」

3つ目の質問は「ご来場されている皆様にメッセージや期待することがあるとすれば?」ということで、登壇者4名の皆様に一言ずついただきました。

玉井さん:
「ご自身の工程以外の方々と対話をし続けましょう。自分の前後の関係者の方々とのつながりを大事にすることで、次のアクションが浮かんでくるのではないかなと思っています」

松本さん:
「各企業さんによって再資源化の目指しているゴールは違うと思いますが、ゴールを教えていただいて、ゴールから逆算して再資源化できる原材料選定を一緒にしながら商品づくりにも参加させていただけたらとてもうれしいです」

張本さん:
「ブランドを一番好きな人、それは現場で働いているスタッフのみなさんだと思うんです。スタッフのみなさんも自社の洋服をたくさんお持ちだと思うので、まずはその服を循環させていく。自社内で小さく回していくというPOCはできると思うんです。われわれのアイテムもKCSの店舗でお客様にお届けしていく連携をさせていただいていますが、こういった施設をフル活用しながらなるべくコストを抑制し次につながるチャレンジをご一緒できると嬉しいなと思っています」

伊藤:
「ご自身の専門領域と違うところ、特に今回のお話しでいえば商流の中でも下流の方にも目を移していただけると嬉しいなと思います。そこに経済合理性がうまれれば業界自体も変わっていくのではないかと感じますし、皆さんが垂直方向につながっていくことでサーキュラーカーボンさんのようなところと再資源化を考慮した素材選定から商品を開発するなど、さまざまな連携が生まれていくのではないかと思います」

「服のエンド・オブ・ライフをどう設計するか?」という大きなテーマに対して、3つの問いとともにWWD JAPAN向さんの軽快なファシリテーションにより、非常に本質的なパネルディスカッションとなりました。

その後の交流会は、KCS内にあるTHE OPEN CAFEのハンバーガーを片手に、参加者それぞれが積極的にご挨拶や情報交換をしてくださり、熱気あふれる時間となりました。

何かの答えを指し示すのではなく、ご来場された皆様も一緒にこの大きなテーマに向き合い、考える視点を共有しながらともに解決の糸口を探る。今回のツアーがそのきっかけの一つになれればとてもうれしく思います。

館内ツアー、綿花種まき体験、「わたしたちのチャレンジ展」までKCSを丸ごと体感

多くの方が参加してくださった館内ツアー。改めてKCSのコンセプトや空間づくりのこだわり、商品の届け方(VMDなど)の工夫などをお伝えしました。

サーキュラーファームではサーキュラーカーボンさんご指南のもと、綿花の種を畑に植える体験を実施。たくさんの方が参加してくださいました。

KCS開業3周年を記念した「わたしたちのチャレンジ展」。KCSのコンセプトやさまざまなチャレンジをまとめたパネルを展示。

展示の内容を真剣に読んでくださるご来場者。

「わたしたちのチャレンジ展」の一部として掲示したポスターは、下の部分がちぎれるように。読んでいただきたいレポート記事の二次元バーコードを掲載しています。

KCSでは常時服の回収を行っています。回収した服の行先は、ワークショップの材料にしたり、サーキュラーカーボン社で土壌改良材にしたり。

「HAZAI Department」のコーナーでは、さまざまなものづくり企業の製造過程で出てしまう端材をレスキュー!これらの端材が何をつくるときに発生しているのかをPOPでお伝え。その場で端材をつかってクリエイションするもよし、詰め放題してご自宅にお持ち帰りいただくもよし。

長野県上田市にあるバリューブックスと連携した本棚を設置。中古市場においてどうしても捨てられてしまう本をレスキュー。

参加者の声(一部)

・今回のバスツアーでは、KISARAZU CONCEPT STOREの取り組みを実際に見ることができただけでなく、参加されたさまざまな企業の方々と交流することができ、とても有意義な時間となりました。特に、サステナビリティに関する取り組みや考え方を直接伺うことができ、多くの刺激や学びを得ることができました。

・業界や立場は異なっていても、同じような課題意識を持って活動されている方々とお話しできたことが印象に残っています。また、施設や展示を通じて、資源循環や共創の可能性を身近に感じることができました。

・スズサン様のお話頂いた内容では「素材・アイテムを変える。技術は継承する」など、要素を整理して持続可能に文化を残していく考え方は、我々小売りにも繋がる部分があり、非常に勉強になりました。そのあとのパネルディスカッションを受けて、作るところから服のエンド・オブ・ライフを考えるというところでは、私たちの事業では素材の選択もよくよく考えていかねばならないと思うと共に、リセール、再資源化それぞれのパートをつきつめていく姿に感銘を受けましたし、業界全体で繋がっていくことの重要性も感じました。初めてKCSにお伺いさせて頂きましたが、色々とお客様とのタッチポイントを工夫していらっしゃり、学びと素敵な交流ができた一日でした。

編集後記

開業3周年を迎え、このタイミングで今回のようなツアーイベントを開催できましたこと、大変うれしく思っています。「新たなサイクルを生み出す実験場」としてファッション業界の課題解決に向き合いながら、お客様にとっては「新たな自分と出会える、ファッションのテーマパーク」としていかにファッションやKCSで過ごす時間を楽しんでいただけるか、という2軸のテーマを追い求め、日々試行錯誤しながら運営しています。KCSは、これまでの3年間でKCSの思いに共感・賛同してくださったパートナー企業、ブランドの皆様、そしてKCSを楽しんでくださるお客様なくしてここまで歩みを進めることはできませんでした。改めてKCSに関わる全ての方に感謝申し上げます。

しかし道のりはまだ半ば。これからも資源循環に向き合いながら、服の価値や可能性を少しでも拡げるためにKCS自らはもちろんのこと、さらに多くのパートナーの方と手を組んで参りたいと考えています。今回のイベントは3周年としての一区切りという位置づけではなく、このイベントを通じて生まれた出会いや対話が、次のアクションへとつながり、よりよい循環の輪が広がっていく第一歩となることを切に願っています。今後もKCSの活動にぜひご期待ください。

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