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Change The Cycle Report
新しいサイクルをつくる、みんなのレポート

レポートMV

REPORT

2024.08.29

ファッションの課題解決に取り組む
ストアパートナーの活動を紹介する「FACTORY LAB」

「KISARAZU CONCEPT STORE」(以下、KCS)では、訪れたお客様や商品を提供するブランドが、単純に服を売り買いするだけではない、服を中心としたファッションのサイクルについて、改めて考える機会が生まれるような実験的な取り組みを行っています。今回はその取り組みについてご紹介します。

残反や什器の提供、産学連携でのコンテンツ創出など
さまざまな関わり方でつながるストアパートナー

KCSを成り立たせているのは、大きく3つの存在です。それは、商品を提供するものづくり企業(ブランドパートナー)、KCSに触れてファッションを楽しむ生活者(カスタマーパートナー)、そして、商品を提供すること以外でKCSに携わる企業や団体(ストアパートナー)です。

ストアパートナーについての関わり方はさまざまです。例えば、洋服の製造工程でどうしても出てしまう残反生地や端切れのご提供。これらはオリジナルトートバッグやキャラクターPUTONsのぬいぐるみに生まれ変わったり、今後は店内サインにも活用することを考えています。また空間づくりにおいては、過去に複数のブランドで使用されていた什器をKCSが引き取らせていただき修理などをしながら再利用。それによって唯一無二の空間ができあがりました。

さらに、教育機関との産学連携も行っています。文化学園大学ファッション社会学科では、月に1回程度学生たちが製作実習や実験で出た残布、衣類回収イベントで交換されなかった衣類を用いてアクセサリーなどの小物製作を行っています。また、文化服装学院ではカリキュラムの中でSDGs文脈での実践的な授業をKCSで実施しています。

その他、不要になった服を肥料や紙、燃料に生まれ変わらせる技術をもつ企業・団体とのパートナーシップもあります。こうしてKCSはさまざまなストアパートナーの皆様と一緒に、新たなサイクルを生み出す実験を行っています。

KCSの考えをストアパートナーと共に発信する「FACTORY LAB」

KCS内にある「FACTORY LAB」では、ストアパートナーの皆様の取り組みの展示や、これに関連したワークショップや企画を行っています。「FACTORY LAB」とは、その名の通り、アップサイクルアイテムを生み出す工房であり、新しいファッションのサイクルに関するアイデアを形にしていくための実験場。普段はなかなか目にすることのできない企業や団体の取り組みを、お客様がその場で体験できる空間になっています。

現在、3つの企業・団体が常設展示をしており、その一つが衣類の大量生産や大量廃棄問題の解決に向けて、革新的な技術やアイデアでアプローチをしているのが「クレサヴァ株式会社」が展開する“CIRCULAR FARM”です。同社は服から肥料を生成して土に還す手法を開発し、着なくなった服、廃棄される服を回収し、破砕や粉砕機で裁断、発酵有機物と混ぜて発酵させた後、専用機械でペレット状にし肥料を生み出しています。この肥料を用いて野菜作りなども行い、新しいファッションの循環を目に見える形で届けています。また、KCS内にお客様が不要になった洋服を持ってくることができる回収BOXを設け、同社の取り組みに活用されています。「FACTORY LAB」に併設した小さなCIRCULAR FARM Lab.では、「衣」を元に出来た肥料を用いて、野菜を栽培。今年の夏はいくつもの野菜が収穫できました。「衣」から新しい「食」へと循環する取り組みを体感できる場となっています。

もう一つは「着るを資源に」をテーマに、廃棄される繊維に焦点を当ててCO2の削減を⽬指している「CCF(サーキュラー コットン ファクトリー)」。ファッションのサイクルの中で確実に生まれる環境負荷の課題に取り組んでいる企業です。CCFでは、裁断くずや落ち綿といった使わなくなった繊維を原料に、和紙や洋紙、内装ボードなどへ転換し、新たな⽤途を生み出しています。

このプロジェクトのなかで開発されたサーキュラーコットンペーパーに、才能にあふれた障害のあるアーティストの方々の作品をプリントし、KCS内で作品の展示販売を行うという日本初の取り組みも実施しています。さらに、これらの繊維からできた紙に触れてもらう機会として、工作などのワークショップも開催。

そしてもう一つの団体が、これからのファッションの世界を支える人材を育み、時代を変えていくような技術の研究にも力を入れている「文化学園大学 服装学部ファッション社会学科」です。「FACTORY LAB」では、同学科が近畿大学バイオコークス研究所と共同で行っている、衣類から次世代再生可能エネルギーを創る研究を、公開、展示するブースを開設しています。廃棄される端切れや仮縫いなどの残布が、「エシカルザンプ®」と呼ばれる燃料になるまでの製造プロセスの展示の他、同学科で学ぶ学生によるワークショップも月に1回程度定期的に開催。2024年5月には株式会社colourloopから端材をご提供いただきオリジナルの植木鉢を作り綿花の種植えを行いました。これは、和綿を育て、その綿を使って布を作り、最終的には製品を作ろう!という港区コットンプロジェクトの一環として港区立エコプラザの協力を得て実施しました。10月にはその綿を収穫し、その後、綿繰り体験を予定しています。その他、近畿大学バイオコークス研究所と共同でエシカルザンプ製造のワークショップも実施しています。これらのイベントは、お子様の体験者が多く、服と環境のかかわりを考えるきっかけの1つになっており、お客様が新しいファッションのサイクルをより身近に感じられる機会を生み出しています。

ファッションの未来について考える機会を

また、KCSでは「FACTORY LAB」における取り組みと連動するような企画も実施しています。

その一つが「コントリ」という仕組みです。コントリはコントリビューション(寄与、貢献)の略称で、KCSの大切な活動です。

KCSの入場料としていただいている300円(中学生以下無料)や、お買い上げいただいた商品代金の一部は、「FACTORY LAB」に展開している前述のストアパートナーを応援するために使われています。

そしてもう一つが、2024年3月より毎月開催しているみんなで目指す「 100%マーケット」。ここでは、新しいファッションのサイクルを生み出すことに取り組む企業によるイベントや、地元や周辺の農家やお店によるマルシェを実施しているほか、「FACTORY LAB」でワークショップなどの企画も行われています。

お客様が着ることのなくなった服を持ってくることで、KCSのお買い物で使えるポイントと交換できる回収BOXの企画では、1回のイベント実施で計1,250kgの服を回収し、その服はクレサヴァにより625kgの肥料に生まれ変わりました。

「FACTORY LAB」では、普段は見えないファッションにまつわる課題を、その解決へのヒントと共に形にして発信し、KCSを訪れるお客様が、楽しみながら自分もその新しいサイクルに触れているような気持ちになる場づくりを目指しています。また、これから参画していく可能性のあるブランドパートナーやストアパートナーの思いや取り組みを、社会につないでいくための企画にも力を入れていきます。ぜひ、引き続き注目してください。